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no.106
テーマ
 私は書く「テーマ」がある時ほど元気が出る。そのテーマを探しに町へ出た。

 大型書店の店頭に並んでいる膨大な数の本を眺めていたら、 ふと目に止まったのが、瀬戸内寂聴の「孤独を生きる」という一冊であった。帯に七十万部突破、堂々のベストセラー「愛しても一人・・・愛されても一人」とあった。

 ベストセラーでもあるし文庫本なので小さくて軽いから良いかなと買い求めた。

 概要は、人間は生まれてから死ぬ迄孤独な生き物である。孤独でないと思っている人は自分の孤独に気がついていないか、気がつくのが怖くて本能的に目をそらし、友情、恋愛、夫婦愛などに取りすがっているだけである。

 また、群れていても、愛しても愛されても若くても老いても孤独なのだ。だから一人一人が自分の孤独と対決し、それを凝視て飼いならす方法を見つけていくしかないのだ、と。

 そこで私は、人はどんなときに強く孤独を感じるのだろうと何人かに聞いてみた。

 Aさんはご主人に先立たれ息子が結婚して家を出て行ったとき。B三は入院していて病状が一進一退し、もうだめかなと思ったとき。

 また、たまたまレストランに入ったら、隣の席に三十代前後かと思われるちょっとすてきなカップルが座っていた。はじめは全くそんな気はなかったのだが、私は突然そのカップルに声をかけてしまった。

 「突然でごめんなさい。お若い方、孤独を感じた事ありますか?もしあるとしたらどんな時ですか?」すると女性の方が

 「もちろん、あります。友人や夫との会話の中でわかってもらえないときなど、ふっと孤独を感じることがあります。でも最近は分かってもらおうと思わなくなりましたね」と。

 二人は夫婦なのだそうだが、夫の方は「会社の中で自分だけ知らなかったことがあって、そんなときは疎外されたような気がしましたね」などなど。突然だったのに、二人とも本当に気持ちよく答えてくれてとてもうれしかった。

 ちなみに私も、家族、友人、知人と会話していて、どこまで理解してもらえたのだろうと疑問に思うとき、心の底からふっとやっぱり人間一人なんだなあと思うことがある。

 けれど意外に、孤独を感じたことがない、意識したことがないという人も多いのに驚いた。

 大都会の屋根の下、どれほどの人たちがやり切れない孤独を抱えていることだろう。でもそれが、きっと生きるということなのだろう。

 出来れば、街頭に立ってもっともっと大勢の人たちの孤独を聞いてみたい衝動に駆られた。


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