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no.90
歩数計
 私は数年前から歩数計を愛用している。若いころは歩くのが好きで好奇心のままどこへでも出かけていた。

 ところが、六十代半ば頃から足に自信がなくなり、時折、膝や腰に痛みを覚えるようになった。

 整形外科を受診したところ、「変形性膝関節症」と診断され、半年間週に二回、膝に注射を続けた。その折、医師はこう言った。「未だ初期だからそんなに心配しなくて大丈夫です。無理しない程度に歩いたほうが良いですよ」と。

 それから私は一体、一日にどのくらい歩いているのだろうと、歩数計を買って使用するようになった。朝起きてエプロンに歩数計をつけ、外出するときはスカートやワンピースのベルトに付け替える。そして帰宅すると又エプロンに付けるという習慣になっている。

 私は歩幅が短いので、大きな人や元気な人とは比べものにならないかもしれないが、あくまで私自身の体なのだから私のペースで体力で歩くしかない。

 そんな訳で、最近外出していてちょっとつかれたかなと思うとき歩数計をチェックしてみると、八千五百歩前後なのだ。おおよその目安として、せいぜい一万二千歩くらいで帰宅しないと、疲れて夕方の家事に支障をきたすのだ。オーバーなようだけど本当のことだ。

 それに面白いことに帰宅して歩数計を付け替えるとき、九千くらいかな、とか一万超したかなとか、大体の予想が当るようになった。体がすっかり覚えてしまったのだろう。これには私自身もビックリしている。

 そんな状態なので友人、知人と行動することが大変になってきた。この歳になると体力の差が大きくなってくるので、あくまで私のペースに合わせて下さる人でないと同行できなくなってしまった。本当に悲しいことだけど途中で歩けなくなったりして人様にご迷惑をかけるのは不本意なので致し方ないと思っている。わがままと思われるかもしれないが歩きたいのに歩けない辛さは自分にしか分からないのだもの。

 やはり体力のないご近所のNさんがこう言った。「一日のトータルで八千歩か九千歩くらいで良いんですってよ。あまり無理すると心臓に負担がかかって不整脈を起こしたりするんですって。だからお互い相手の言うことを信じましょう。体のことは自分にしか分からないんですもの」

 そしてこう付け加えた。「貴方のペースで良いから今度どこか行きましょう」と。

 有難いけど、私だって歩数計なんか気にせずに歩き回れたらどんなに良いかしらと思う。

 ああ、情けないことになったものだ。こんなに早く歩けなくなるなんて!まだまだ行きたいところ、もう一度行ってみたいところがたくさんあるのに! そうだ。こうなったらタクシーででも行こうかな!!


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