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no.97
靖国参拝
 二歳年上の友人Aさんが、私に「読んでみて」と言って手渡してくれた封筒の中身は、新聞の切り抜きであった。その切り抜きは過日小泉首相の「靖国参拝」に関するさまざまな論評の記事であった。

 というのは、八月十六日たまたまAさんと食事していて、「参拝」の件で大激論_になったからだ。

 彼女はA級戦犯が合祀されている靖国神社に首相が参拝することは絶対許されない。まして八月十五日に行った事実は、中国や韓国に対する挑戦だという主張であった。

 私は、二度と悲劇がくり返されることのないよう戦没者に思いをはせ参拝することが、そんなに責められることなのだろうか、という意見であった。もちろん「靖国参拝」をめぐって多くの問題がある事は十分承知している。

 しかし、戦後六十一年も経過して戦争被災者の平均年齢は七十三歳だそうだ。そんな現在、未来に向かって「不戦の誓い」を新たにすることが、より建設的な考え方ではないかと思うのだ。逆に参拝しなかったら、どんなに状況が変化したというのだろう。

 すると彼女、顔色を変えて?むきになったこう言った。
 「常識的なあなたがそんな事を言うなんて思ってもいなかったわ。どうしてそんなことが言えるの?信じられないわ」

 私は私で彼女がどうしてそんなにむきになるのか信じられなかった。まるで私の人格すら否定しかねない剣幕であった。いつも仲良しの二人が、この件に関してはどうして意見が分かれたのだろう。

 それにしても主婦が真顔で口角泡を飛ばして語り合った二人だったが、後日、「まだまだお互い元気ね」と爆笑してしまった。私は一つの話題でここまで舌戦に及んだのは、これまで生きてきてはじめてだった。ああ、おもしろかった。

 ところで、Aさんが見せてくれた記事だがどれ一つとして同じ意見はなく、結局自分の言いたい放題で終始していた。私は納得したり批判したり、知らなかったことを教えられたりしながら取りあえず全て読んでみた。そして、こういう問題は本当に難しいものだと改めて気がついた。歴史に残るのだもの。

 それにしても彼女がここまでこだわる理由はなんなのだろう。いくら話し合っても結論などでるはずもなかったが、彼女が私に読ませようとして切り抜きを持ってきてくれた気持ちは素直に嬉しかった。

 Aさんとの仲はますます深くなったような気がする。


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