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no.98
初秋のある日
196.3  その日は、文章サークル「Kの会」の予定日だった。しかし、ここのところ少し引き気味になっている私は、取りあえずT病院に血圧の薬をもらうために出かけた。「Kの会」の友人には「病院が終わり次第出席します」と伝えた。

 二ヶ月ぶりの病院は月曜日ということもあり患者で溢れていた。私はそれを見て二時間はかかるだろうなと判断し、談話室の片隅でエッセイの下書きをはじめた。

 一時間ほどして待合室に戻ると、まあ、びっくり。入院していた当時、同室だったNさんと出会ったのだ。久しぶりだったのでおしゃべりに花が咲き、あっという間に時間が過ぎてしまった。

 さて、再会を約束して彼女と別れ、「Kの会」に出席するため?私はT駅に戻った。そして昼食をとろうとレストラン「コージーコーナー」に入りカレーを注文した。

 となりの席には、大きなショートケーキをぱくついているお年寄りの女性がいた。私がカレーを食べはじめると彼女がこう話しかけてきた。

 「カレーおいしいですか?以前食べたときおいしくなかったので」と。私は、
 「ここのお店は最近、カレーの種類も多くなったし、いまわたしが食べているリンゴカレーは甘酸っぱくてとてもおいしいですよ」と答えた。

 「そうですか。じゃ今度食べてみようかな」という会話から十五分も話が弾んだ。
 おばあちゃまは九十歳というが、染めているようには見えなかったけど髪も黒々として、あまり皴も見受けられず、からだもしゃきっとしていた。ある面では私より元気そうに見えた。そしてその言葉がそれを証明していた。

 「せっかく生まれてきたんだもの。長生きしなくちゃね。百歳を目指しているのよ。そのためには健康でいなくちゃね」

 私はその前向きな姿勢に圧倒された。彼女の言うこと全て納得できるけど、ついつい弱音を吐いてしまう私。なんて情けない私なのだろう。現にたまたま病院帰りにこんな話を聞くことになろうとは。百歳は無理だけど取り敢えず八十歳を目指して頑張ろうかな、と元気が出た。

 勿論健康には個人差があるし家庭環境もある。彼女は二世帯住宅らしく、「息子夫婦が大事にしてくれるから何の心配もないのよ」と言っていた。そして、「またお会いしましょう」と足取りも軽やかに帰っていった。

 そんな訳で結局二時半になってしまったので「Kの会」は欠席した。その日は「Kの会」以上に有意義な一日だったような気がしている。


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